笛吹きのつぶやき

教育の温度

(2009/08/15 Sat)

アサヒ・コムの松尾慈子が「漫画偏愛主義」でこうの史代の「夕凪の街 桜の国」を取り上げた時だったと思うんだが、広島出身の彼女がそうでない人と話をしていた時に、誰もが子どもの頃に原爆教育を受けたわけではないと知ってびっくりした、という記述があった(元ネタを確かめたかったんだが、アサヒ・コムのさらに会員限定サイト「アスパラクラブ」のA.I.C.というコラム集で連載されていたもので、アーカイブはいつの間にか少しずつ削除されていき、ある日まったくなくなっていた。いいコラムがたくさんあったのにもったいない。アーカイブくらい残しておいてくれたっていいじゃん、朝日新聞)。私は広島出身ではないので「はだしのゲン」を観た、というくらいしか記憶がないが、その土地によって戦争について子ども達に伝える方法の温度差はあるんだろう。

私が小学生の頃のある年、従姉が夏休み中ずーっと我が家に滞在し、普段は会えないお姉ちゃんとずーっと遊んで、うちの両親もいつもの夏休みではありえない張り切りぶりで海だのプールだの連れて行ってくれたことがあった。他の夏休みはそんなに遊びに出かけた記憶がないので、子どもには大サービスの夏休みだったのだが、その年の秋にその従姉の父である叔父(といっても叔母の夫で、たぶん私は会ったことはない)が長崎の原爆の結果であろう白血病で亡くなり、実は従姉は看病が大変なのでうちに預けられていたことを知らされた。小学生とはいえ、戦争の話は教科書にも出てくるし、なにより親世代の実体験として折に触れ(しばしば武勇伝のように)語られてきたので、戦争の話は幼いなりに理解していたつもりでいたが、長崎の原爆投下から30年は経っていて、しかも話によると「向こうの山越えた先でなんか光った」という被爆であったらしい叔父がその影響で亡くなったという事実は衝撃だった。

長じて日本人以外と話す機会が増えて思ったことは、日本の地名といわれて外国人がまず思いつくのはもちろん東京だが、次に出てくる地名としては広島・長崎が多いということだった。核兵器を保有している国の人でも(いや、だからこそかもしれないが)、原爆を投下された唯一の国として日本を認識し、その地名を教えられており、私が会った人達はおおむねその事実に関しては同情的だった。残念ながら、アメリカで生まれ育ったアメリカ人とそんな話をする機会には今のところ恵まれていないので、実際のところアメリカ人が原爆についてどう思っているのかを知る機会はないのだが、他の国との温度差を考えると、そのへんはどうも政府が都合のいいように教育している部分ではないかと思われる。

戦争を終わらせるために必要な手段だったとかいう議論を始めると終わりが見えなくなるので、それについてどうこう言うつもりはないが、日本のアニメやバラエティ番組を輸入しているアメリカなら、「ナルト」や「ピカチュウ」ばかりではなく、「はだしのゲン」や「夕凪の街 桜の国」ももっとメジャーになってほしいものだと思う。国の勝手な都合で一般市民が何十万人も犠牲になっただけでなく、七年殺しどころか20年、30年殺しの影響を残し、64年も経った今でもまだ影響が出てくるような爆弾であることを、それを受け入れて生きるしかない人達のことを知ったら、それを使うことを許容できる人がいるだろうか・・・でも、いるんだろうな。だから今でも戦争はなくならないわけだし、もっともらしいことを言って兵士を戦地に送り込む人達がいるわけだし。



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